英語表記に気をつけよう[3]:冠詞の“a”と“the”どっちを使う?
第1回 その表示、英語でちゃんと伝わる?
第2回 ハイフンとスペース、ダッシュの使い分け
に続き、欧文書体の書体ディレクター、ヨアヒムさん協力のもと「英語表記でありがちな間違い」とその解決法をご紹介していくこのシリーズ。
第3回は、日本語を使う私たちにはちょっとなじみのない「冠詞」を取り上げます。
第3回:日本語にはない英語のルール、冠詞の正しい使い分け
これは“a”でいい? それとも“the”?
“a”、“an”、“the”などの冠詞は、用法を間違えてしまっている例をよく見かけます。前後の単語によっても、そして文章で表したい意味によっても変わるので注意が必要です。
特定のものを指さない場合は“a”を使おう
“a”や“an”は、不定冠詞と呼ばれ、名詞が「不特定」である場合に使う冠詞です。不特定な情報やグループの中の特定のメンバーを表すときなどに使います。
“a”を使うケース[1]:初めて出される情報
例)Would you like a drink?
「何か飲む?」という呼びかけは、数ある飲み物の中の「これ」と特定していないので、“a”を使います。
“a”を使うケース[2]:あるグループ内の1つ、もしくはグループの中のメンバー(1人であること)を指すとき
例)I want to be a doctor in the future.
「将来、医者になりたい!」という場合は、「世の中にいる医者のうちの1人」になりたいということなので“a”を使います。
“a”を使うケース[3]:特定の日ではない曜日を指すとき
例)Could I come over on a Saturday?
これも「決まった土曜」ではなく、「どこかの土曜」と特定されていないので“a”を使います。
特定のものを指す場合は“the”を使おう
“the”は定冠詞と呼ばれます。特定された名詞の前に付けるものになりますが、名詞が「話し手や聞き手の中で共通認識を持っているもの」や「決まりきっていること」などの場面で使います。
“the”を使うケース[1]:名詞が示すものが特定されているとき
例)The school in the nearby town seems good.
「街の近くのその学校」と特定しているので、“the”を使います。
“the”を使うケース[2]:話し手や聞き手の中で共通認識を持っているもの
例)I finally went to the park yesterday.
話し手と聞き手の間で、「やっとあの公園にいったよ」とどこの公園かが特定できているので、“the”を使います。
“the”を使うケース[3]:決まりきっていること
例)The sun is shining everyday.
太陽は世界に1つしかないので特定できます。そのような場合には“the”を使います。
“a”と“the”の違いを見分けるポイントは「特定のものかどうか?」でした。では、最初にお見せした「最後尾」の看板は「End of a line」と「End of the line」どちらでしょうか?
そう、正解は“the”の方ですね。「この」列の最後に並んでくださいと列を特定しているので、“the”を使います。
冠詞がつかない、2つのケース
そしてもう一つ注意したいのが、単数形と複数形で語末が違う例です。
次は道に立てられた、観光案内所の場所を示す案内板です。「A Tourist」と名詞の前に不定冠詞を付けていますが、見出し、標識、ラベル、メモなど、簡潔さが重宝される場面では、冠詞などを付けないというルールがあるのです。
そして、人生、平和、天国などの抽象的な概念については冠詞は付きませんので、こちらも覚えておきましょう!
なじみがない分、目が行き届きにくくなる冠詞。まず正確な翻訳を行うために、その案内が示すものや置かれる場所・シチュエーションを想定しておくといいでしょう。
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