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焼きたてカスタードアップルパイ専門店RINGOのための、おいしくて楽しい書体「RINGO TYPE BOLD」登場!
昨年12月、カスタムフォント「RINGO TYPE BOLD」が登場しました。
株式会社BAKE(以下BAKE)が運営する、焼きたてカスタードアップルパイ専門店 RINGOのロゴに基づき制作された、ブランド専用の欧文書体です。
フォントワークス書体デザイナー中村勇弥が企画・制作しました。
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PRESS BUTTER SANDやBAKE CHEESE TART、2023年登場のしろいし洋菓子店など、数々の人気お菓子ブランドを輩出するBAKEは、とびきりのお菓子はもちろん、高いブランド力・デザイン性でファンを獲得しています。
なかでもRINGOは長く愛されているブランドです。
この記事では、そんなRINGOのために制作された、RINGO TYPE BOLDの魅力をご紹介。
BAKEクリエイティブディレクター河西さん、RINGOクリエイティブチーム小林さん、林さんに伺ったお話を織り交ぜながらお届けします!
書体を通し、すてきな「RINGOらしさ」を感じてもらえる一助になるとうれしいです。
BAKEやRINGOのブランディングとデザインに迫ったインタビュー編とあわせてお楽しみください!
また、書体のご提案に至った詳しい経緯や、約4か月に及ぶRINGOクリエイティブチームとの試行錯誤については、“the BAKE Magazine”に対談記事が公開されています。要チェックです!
[RINGOデザイナーさんインタビュー編はこちら]
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〈書体デザイナー プロフィール〉
中村勇弥
早稲田大学文学部卒業。2020年フォントワークスに入社。入社後から藤田重信のもとで築地活版製造所の明朝体復刻プロジェクトや企業のカスタムフォント制作に携わる。
文/中村勇弥
ロゴから受け継ぐ〈カオス〉な超バランス
RINGO TYPE BOLDは、遊び心たっぷりの書体です。
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2つのロゴをもとに、アルファベットや数字、記号まで展開したのがRINGO TYPE BOLD。
記憶に間違いがなければ、ロゴを見たフォントワークス欧文書体デザインディレクターのヨアヒムさんから、「カオスだ」と言われたことがあります。「だから、当然書体もカオスになる」と。
もちろん褒め言葉です。というのも、その〈カオス〉こそが、RINGO TYPE BOLDの遊び心の源だからです。
RINGOのロゴは、基本的に幾何学図形を組み合わせたような形をしています。しかし単純にそれだけともいいきれず、背景にはFuturaなど複数の書体の影響が見え隠れします。
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ステンシル体に見られる細いスリット、モダンなローマン体を特徴づける太・細の高いコントラスト、そして幾何学的な骨格。
それらが巧みに、超越的なバランスで組み合わされています。
さらに、円の中心で止まっているOの水平なスリットが非常に独創的です。
ここで、Nに注目してみます。
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太・細の関係が、一般的な書体とは逆になっています。
考えておきたいのは、このロゴをつくったデザイナーさんが、奇抜な表現を狙ってそうしたのかどうかです。
感覚的な想像でしかありませんが、僕にはそう思えませんでした。もちろんRINGOの個性を表現することが前提にあったうえでですが、むしろ自然にNをあの形にされた気がしたのです。
その自然さが、清潔感や親しみやすさにつながっているように思えます。
なので、僕も自然に、Mのオルタネート(異体字)やZにもこの「逆」の要素を取り入れることにしました。
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カオスなRINGOロゴに導かれるように、遊び心をたくさん仕込んでいったのです。
その最たる例が、たくさんのオルタネート(異体字)です。
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小林さん ベータ版の段階から、いろんな言葉を打ってみるのが楽しかったです。これまで必要に応じて1文字ずつ作字していたんですが、書体ができたことで打つだけでRINGOらしく表現できるし、しかもオルタネートも贅沢に揃えていただいて、ほんとうに幅が広がりました!
河西さん 最初のプレゼンで見たときから、小文字の「g」が、よくこんな形を見つけたなって思ってます。
RINGO TYPE BOLDには、厳密にはロゴと異なる部分もあります。その代表がオーバーシュートと呼ばれる視覚的な処理です。
まず、ロゴはすべての文字の字面が、基準となる線にぴったり揃うようデザインされています。
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一方、書体であるRINGO TYPE BOLDでは、Nの尖った部分や円形のG、Oなどを、基準線からはみ出させています。
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これは、「見せる」ロゴと「読ませる」書体の違いです。尖った部分や曲線は、直線より低く・小さく見えるため、オーバーシュートの処理を行い、自然な読み心地を実現します。
でも、ロゴはブランドの重要なアイデンティティ。
そこで、弊社技術担当にお願いし、「RINGO」および海外でのブランド名「RAPL」と入力すると、自動でロゴに置き換わる機能もつけてもらいました。
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無理に言語化するよりも、形で表現しよう
RINGO TYPE BOLDのプロジェクトは、まず僕が勝手にひと揃いつくったベータ版を携えて、BAKEさまを訪問するところから始まりました。
幸運にもベータ版を喜んでいただけたことで、本格的にプロジェクトとしてRINGOデザイナーさんのご意見・ご要望を取り入れ、ブラッシュアップしていくことに。
そのなかで、RINGOらしさとは何なのかということを、言葉によらないかたちで受けとることができました。
理解したというより、インストールされたという感じです。
たとえば、RINGOデザイナーさんの意見が入っていないベータ版のHは、もともとこんなふうでした。
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これをもとに、ご要望を反映した決定版がこちらです。
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同じような変更は小文字にも。
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そして、もっともはっきりとRINGOらしさを認識できたのは、小文字のyの変更でした。
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これ以外にも、さまざまなブラッシュアップを、よりRINGOらしい形をめざしてほどこしていきました。
林さん 最初は1文字単位でフィードバックさせていただいたんですが、ラリーが続いていってある程度ベースができてきたら、今度はRINGOが毎年出すことの多いフレーバーであるPEACHやBERRY、あとはCOMING SOONなど、よく使う言葉を組んで確認していきましたね。
小林さん 言語化が難しくて、「これがRINGOっぽくなくて、逆にこれはRINGOっぽくて」みたいな、ざっくりな伝えかたになってしまったこともありました。でも、中村さんとの間でRINGOらしさの共通認識がちゃんとできていって、デザインに昇華していただけたと思います!
シンプルさとか、潔さとか、フィードバックをもとに行ったブラッシュアップを表すキーワードはいろいろあります。
だけど、言葉にできない部分のほうが、ほんとうは多いんだと思います。
だから時には「y」のように、百の言葉を尽くすより、ひとつの「形」が雄弁なことだってあるのです。
RINGO TYPE BOLDは、強靭なRINGOらしさが形になったもの。ブランドの発する言葉をたっぷりと、RINGOらしく味付けして、読む人の直感に訴えかけます。
遊び心を加速する数字のデザイン
数字のデザインについても触れさせてください。
RINGO TYPE BOLDは、ライニング数字とオールドスタイル数字の2種類を収録しています。
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一般的な書体とは異なり、2種類は雰囲気をガラッと変えてあります。
ライニング数字は太さと幾何学感を保ちながら、商品の値段やキャンペーンの日付など、情報を担えるように読みやすくデザインしました。
オールドスタイル数字では、さらにRINGOらしい遊び心に振り切って、形のおもしろさを追求しました。
どちらの数字もアルファベットとはちょっと勝手が違い、まとめるのにとても苦労したことを覚えています。苦労したぶん、楽しいものになったかな、と思います。
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RINGO TYPE BOLDとこれから
ここまで、RINGOロゴとRINGO TYPE BOLDのつながりや、RINGOらしさについて紹介してきました。
最後に、河西さん、小林さん、林さんに、RINGO TYPE BOLDがブランドにどう貢献していくか、夢を語っていただきました。
河西さん RINGO TYPE BOLDの数字でデジタル時計をつくってみたいですね。ほかにもRINGO ロゴと同じ印象をもつ表現が増え、お客さんに体験してもらえるので、いままで以上にブランドが強くなっていくと思います。
小林さん アルファベットが揃ったので、将来的に、スペシャルギフト用の名入れのサービスができたりしたらいいなあ、と思います。夢が広がって止まらないくらいです(笑)。文字を読むことを通してRINGO を思い出してもらえるきっかけが増え、さらなるブランド認知拡大と、RINGO を愛していただく要素として活躍してほしいです!
林さん 最初にプレゼンに来られたとき、「RINGOのロゴが好きでフォントをつくってくれた人がいるらしい」くらいの、軽い気持ちで座っていたら、ものすごい物量が出てきて「これは只事じゃないぞ」と思いました(笑)。ビジュアル面では、書体と色でRINGO だとわかるようになったので、いままでにない、より潔い表現ができそうです!
RINGO TYPE BOLDは、2024年12月より店頭やSNSなどで活躍中です!
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今後の展開を、ほんとうに楽しみにしています。
RINGOやBAKEのブランディングとデザインに迫ったインタビュー編も、ぜひご覧ください!
[RINGOデザイナーさんインタビュー編はこちら]