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英語表記に気をつけよう[3]:冠詞の“a”と“the”どっちを使う?

第1回 その表示、英語でちゃんと伝わる?
第2回 ハイフンとスペース、ダッシュの使い分け
に続き、欧文書体の書体ディレクター、ヨアヒムさん協力のもと「英語表記でありがちな間違い」とその解決法をご紹介していくこのシリーズ。

第3回は、日本語を使う私たちにはちょっとなじみのない「冠詞」を取り上げます。

〈書体ディレクター プロフィール〉
Joachim Müller-Lancé(ヨアヒム・ミュラー゠ランセイ)
1961年ドイツ出身。スイスのバーゼル・スクール・オブ・デザインでグラフィックデザインを学び、日本を含める各国のタイポグラフィコンペティションで優勝するなど高い評価を受ける。
2018年にはソウルのフォントメーカーYOON Designの欧文のデザインディレクターとして活躍。2020年から、フォントワークス社に加わり、現職の欧文書体の書体ディレクターに就任。

第3回:日本語にはない英語のルール、冠詞の正しい使い分け

これは“a”でいい? それとも“the”?

これはaでいい?それともthe?

“a”、“an”、“the”などの冠詞は、用法を間違えてしまっている例をよく見かけます。前後の単語によっても、そして文章で表したい意味によっても変わるので注意が必要です。

特定のものを指さない場合は“a”を使おう

“a”や“an”は、不定冠詞と呼ばれ、名詞が「不特定」である場合に使う冠詞です。不特定な情報やグループの中の特定のメンバーを表すときなどに使います。

“a”と“an”の使い分け
「a e i o u」の母音の前は“an”になり、それ以外は“a”を使います。ただし、「あ」または「う」のように発音される母音「u」の前は“an”ですが、「ゆ」のように発音される母音「u」の前では“a”を使用します。
例)an upload、a university

“a”を使うケース[1]:初めて出される情報
例)Would you like a drink?
「何か飲む?」という呼びかけは、数ある飲み物の中の「これ」と特定していないので、“a”を使います。

“a”を使うケース[2]:あるグループ内の1つ、もしくはグループの中のメンバー(1人であること)を指すとき
例)I want to be a doctor in the future.
「将来、医者になりたい!」という場合は、「世の中にいる医者のうちの1人」になりたいということなので“a”を使います。

“a”を使うケース[3]:特定の日ではない曜日を指すとき
例)Could I come over on a Saturday?
これも「決まった土曜」ではなく、「どこかの土曜」と特定されていないので“a”を使います。


特定のものを指す場合は“the”を使おう 

“the”は定冠詞と呼ばれます。特定された名詞の前に付けるものになりますが、名詞が「話し手や聞き手の中で共通認識を持っているもの」や「決まりきっていること」などの場面で使います。 

“the”を使うケース[1]:名詞が示すものが特定されているとき
例)The school in the nearby town seems good.
「街の近くのその学校」と特定しているので、“the”を使います。 

“the”を使うケース[2]:話し手や聞き手の中で共通認識を持っているもの
例)I finally went to the park yesterday.
話し手と聞き手の間で、「やっとあの公園にいったよ」とどこの公園かが特定できているので、“the”を使います。

“the”を使うケース[3]:決まりきっていること
例)The sun is shining everyday.
太陽は世界に1つしかないので特定できます。そのような場合には“the”を使います。


“a”と“the”の違いを見分けるポイントは「特定のものかどうか?」でした。では、最初にお見せした「最後尾」の看板は「End of a line」と「End of the line」どちらでしょうか?

そう、正解は“the”の方ですね。「この」列の最後に並んでくださいと列を特定しているので、“the”を使います。

誤:End of a line
正:End of the line


冠詞がつかない、2つのケース

そしてもう一つ注意したいのが、単数形と複数形で語末が違う例です。
次は道に立てられた、観光案内所の場所を示す案内板です。「A Tourist」と名詞の前に不定冠詞を付けていますが、見出し、標識、ラベル、メモなど、簡潔さが重宝される場面では、冠詞などを付けないというルールがあるのです。

誤:A Tourist Information Center
正:Tourist Information Center

そして、人生、平和、天国などの抽象的な概念については冠詞は付きませんので、こちらも覚えておきましょう!

Life is beautiful.
Peace is difficult to achieve.
This vacation is like heaven.

なじみがない分、目が行き届きにくくなる冠詞。まず正確な翻訳を行うために、その案内が示すものや置かれる場所・シチュエーションを想定しておくといいでしょう。

※本記事は2020年、Fontworks「もじがたり」に掲載された「英語タイポグラフィ講座 初級編」を再編集してお届けしています。(イラスト:ヨアヒム・ミュラー゠ランセイ/構成:フォントワークスnote編集部/協力:アドビ社)


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