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ATypI 2024から紐解くタイプトレンド

2024年4月16日から5日間に渡り、オーストラリア・ブリスベンでタイポグラフィと書体デザインを専門とする国際カンファレンスATypI(エータイプアイ)が開催されました。

今年のATypIでは、Monotypeからシニア・タイプデザイナー、土井遼太と中国のタイプデザイナー、Tao Di が「中国と日本のタイプトレンド」について講演。その他にも、同社のエクゼクティブ・クリエティブディレクター、Doug Wilson、SVP兼CTOであるVenkat Yetrintalaがそれぞれ講演しました。

今回のNoteでは、スピーカーとして参加した土井さんに今年のATypIについてお話を伺いました。

土井遼太
東京藝術大学デザイン科を卒業後、英国レディング大学書体デザインコースで修士号を取得。2015年よりタイプデザイナーとしてMonotypeに在籍し、企業制定書体の開発や、書体選定をはじめとしたコンサルティングを行う。また、たづがね角ゴシックの制作メンバーとして、ファミリー展開やCJK(中日韓)言語に対応した字種拡張にも携わる。最近では、大学での講義や国際カンファレンスでの登壇を通じ、国内外に向けて書体についての発信をしている。

Tao Di
Monotype上海の書体デザイナー、Tao Diは、大学では工学を専攻する。卒業後はグラフィックデザイナーとして中国の広告代理店に就職する。このとき書体の魅力に取り憑かれ、独学で書体デザインの勉強を始める。2019年開催のモリサワのタイプデザインコンペティションでは作品がファイナリストに選ばれた。

ATypI 2024 のキーワード:AIと多言語

— 2019年に日本で開催された ATypIでは、バリアブルフォントの話題が多かったように感じましたが、土井さんの視点で感じたトピックを教えてください。
土井:まず、今回多く取り上げられたトピックは、AIに関する内容でした。AIがどのようにフォント制作の助けになるのか、または、多言語展開に対応するために必要な作業がAIによっていかにオートメーション化できるか、といったプレゼンテーションがありました。

前回、日本で開催された時に多かったバリアブルフォントの話題はあまり見られなかったですね。すでに海外では、スタンダードとして認知されてきているのだと感じました。

もう一つは、CJK(中国語、日本語、韓国語)を含む多言語に関するトピックが多くあったことも時代の変化を感じました。これまでは、欧文以外の言語について講演する際、基本的な知識を最初に話すことが多かったのですが、今回はその基本的な話は簡単に触れられるだけで、それよりも一段階上の話からスタートしていました。こうしたことを踏まえると、海外から見ても多言語というワードがトレンドであるという見方ができるのではと感じました。

中国と日本のトレンド

— 今回ATypIで講演を行った「中国と日本のトレンド」について、教えていただけますか。
土井:前回、私が参加したBITSでは20分のプレゼンテーションで、中国と日本の市場トレンドに関する近年の調査結果を具体例とともに紹介しました。今回は、30分いただけたため大きく2つ内容を追加。全体にアップデートしてお話ししました。

一つ目は、中国語書体と日本語書体の1960年代から現代までのトレンドをチャートを利用して表現した点です。書体の特徴を2つの軸をもとに大別することで、デザイナー以外の人にも説明しやすいツールになると思いました。
2つ目は、過去1年間、街中で見かけるような書体のトレンドについて中国と日本を比較しながら説明した点です。

— 土井さん、Taoさんの講演を通してどのような気づきがありましたか?
土井:先ほどお話ししたトレンドのチャートでは、公共の場で使用されるゴシック体のトレンドの変遷を、ゴナ、ヒラギノ角ゴシック、たづがねを例に用いて説明したのですが、この3書体のデザイン的な違いについて、理解度は参加者の知識によって大きく違うことがわかりました。

日本語を母国語とする人には分かりやすい微妙なデザインの違いを国際カンファレンスの中で伝えるのは難しいです。日本語話者以外の人に書体のどの部分を見てデザインの違いを認識しているのか、感覚的にではなく、理論的に説明できるようにするのが理想だと思いました。

活字鋳造機のドキュメンタリー映画 『Linotype: The Film』

— 土井さん、Taoさん以外にもMonotypeからお二人、エクゼクティブ・クリエティブディレクターのDoug Wilson、SVP兼CTOのVenkat Yetrintalaが講演されていました。講演内容について教えてください。

土井:一人目のDougさんは、自身が監督を務めた『Linotype: The Film』を上映し、Q&Aのセッションを行いました。

Linotype: The Film
2012年に公開されたLinotypeの活字鋳造機を中心とした長編ドキュメンタリー。Thomas Edisonによって印刷と社会に革命をもたらしました。Linotypeに関わった熱意ある人々の物語と、それが世界にどのような影響を与えたかを語ります。

ブリスベンでの上映に加え、映画上映後にDougさんが直接質疑応答するセッションが設けられ、映画に関するさらなる洞察と背景が話されました。

私は今回初めてこの映画を観ました。デジタル書体が当たり前になる前の時代から書体に関わっていた方々の、仕事に対する熱意や姿勢を垣間見ることができて、改めて書体業界が担うインフラとしての役目を実感することができました。

Doug Wilson エクゼクティブ・クリエティブディレクター
米国コロラド州デンバー在住。作家、デザイナー、フィルムメーカー、サイクリスト。これまで、Starbucks、Herman Miller、Virgin Mobileなどの企業でプロダクトデザインのマネージャーを務める。2012年に『Linotype: The Film』を監督。2023年には最新プロジェクト「The Linotype Book Project」を発表。

二人目のVenkatさんのセッションは、彼のMonotypeで行っている技術的な分野における研究について、またこの技術をどのようにフォントに適用するかという内容でした。フォントというとデザインやデザイナーに注目が向けられますが、ATypIではこういったエンジニアからの目線で普段触れられない技術的なレクチャーがあって面白いです。

Venkat Yetrintala SVP兼CTO
Monotypeでは、デジタルおよびアイジャルトランスフォーメーションの取り組みを主導。デジタルタイプセッティングと書体デザインの分野に精通し、革新的なSaaSおよびクラウドベースのソリューションの開発を担当している。

(写真左から)Doug Wilson、土井遼太、Venkat Yetrintala

今年は、デザイナー以外のメンバーも登壇したATypIでしたが、常に業界を牽引し続けるMonotypeであるために、デザイン以外の側面からも最新の技術を目指しています。

Monotypeでは、企業が選ぶ書体についての課題や問題点を一緒に解決できるようなお手伝いをしています。また、中国や日本のトレンドについての企業向けレクチャーも行っております。まずはお気軽にご相談ください。

Monotypeのサービスや製品に関するお問い合わせ: ContactMTJ@monotype.com


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