こんなところにmojimo-live! YouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」のテロップについて聞いてみました
文字に注目しながら生活していると、息抜きにテレビや動画を見ていてもやっぱりフォントが気になります。とくに最近、mojimo-live(※1)を導入してくださっている方が増えているのもあって、YouTubeの動画配信もついついチェックしてしまいます。
そんななか、フォントワークスnote編集部内にもファンが多く、以前から話題に上がっていたのがYouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」。「くろかね」や「UD角ゴ_ラージ」、「つばめ」などなど……こ、このテロップ書体のラインナップは、mojimo-live……!!
そこで今回は、ゲストにYouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」を運営する書店・有隣堂の渡邉郁さん、馬淵基季さんと、プロデューサーのハヤシユタカさんをお迎えして、テロップとフォントの役割、そしてmojimo-liveの活用についてお話をうかがいました!
テロップのフォント選びはmojimo-liveから
— YouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」は、2020年6月30日公開の「キレイの概念が変わる!キムワイプの世界」を皮切りに、番組MCのR.B.ブッコローと有隣堂のスタッフのみなさんが、文具や本、書店にまつわるさまざまなことを紹介されています。私自身もチャンネルのファンで楽しく拝見しているのですが、普段はどのように動画制作をされているんですか?
有隣堂 渡邉郁さん(以下、渡邉):プロデューサーのハヤシさんと有隣堂のスタッフ3名ほどで制作に臨んでいます。動画のテーマやネタなどを有隣堂スタッフが考えて、台本から撮影、編集までのすべてをハヤシさんに担当いただいています。撮影にはだいたい1時間ほどかけていて、8分から10分ほどの動画として公開しています。
— テロップなど動画に使われる文字は、mojimo-liveのフォントでそろえてくださっていますね。導入されたきっかけは?
ハヤシユタカさん(以下、ハヤシ):我々のチャンネルは、名前を見ても分かると思うんですけどTBSの「マツコの知らない世界」というテレビ番組を参考にしていて、番組で特徴的に使われている「くろかね」というフォントが使えるサービスを探していたのがきっかけでしたね。
実際に使ってみて、mojimo-liveは質の高いフォントがキュレーションされているので、フォントを探す手間が省けるのが便利です。テロップを雰囲気に合わせた書体にしたいときにmojimo-liveから探せばすぐに見つかりますし、喜怒哀楽を表現できるフォントが網羅されています。
— 「mojimo」のサービスは気軽に使える価格設定で、用途ごとのおすすめ書体をセレクトしたパックとして提供しているので、そこにメリットを感じていただけているのはありがたいです。
ハヤシ:テレビのバラエティ番組などはものすごく頻繁に書体を切り替えていますけど、制作工程の多くを一人で担当しているとあまり余裕がないんです。映像編集スタジオの人たちのように普段からフォントを見ているわけでもないので、このぐらいの数のフォントが収録されたサービスがちょうどいいなと感じています。
チャンネルの定番は「くろかね」と「UD角ゴ_ラージ」
— 実際にテロップ制作での書体選びについておうかがいします。各動画のテーマとなる見出しには「くろかね」が大きく使用されていますね。
ハヤシ:そうですね。サイドのテロップにも使っていますし、「有隣堂しか知らない世界」のロゴにも使用しています。
— くろかねは、普通のゴシック体とは違って固すぎず、かといって遊びすぎてもいない、カジュアルな“学び感”みたいなものに合うフォントだなと思います。テレビのテロップでも人気のある書体です。
ハヤシ:極めて使いやすいフォントだと思います。おっしゃる通り、普通のゴシック体だとつまらないという時に、そこまでごちゃっとさせずに、ちゃんと読みやすいフォントとして使えます。
— また、基本のテロップには「UD角ゴ_ラージ」、出演者名には「つばめ」が使用されています。
ハヤシ:UD角ゴ_ラージは、数あるゴシック体の中でも視認しやすさと太さ重視で選びました。最初はmojimo-liveに限らず、いろんなフォントサービスを探した中から選び抜いたフォントでしたね。
— 動画の中でかなり大きく表示されていますよね。
ハヤシ:僕はYouTube動画のテロップは読ませちゃ駄目だと思っていて、“かたち”で文字を認識させることを意識しているんです。視聴者が文字を読もうとすると疲れてしまうので、ストレスを感じることなく最後まで動画を見てもらう上では大事な視点だと思っています。
— 文字が目に入るくらいがちょうどいいということでしょうか?
ハヤシ:そうですね。「有隣堂しか知らない世界」では、テロップの表示時間が場合によっては1秒を切ることもあるんですが、それでも何が書かれているかが分かるのは、形で文字を認識しているからなんです。形として見せるには明朝体よりもゴシック体がより適切で、太くて大きく表示してもちゃんと読めるフォントとしてUD角ゴラージがいいなと。
あと、テロップ制作では見る人の目線を迷わせないことを意識しています。スマートフォンで動画を見る人がほとんどだと思うので、小さい画面の中でも、今どこを見ればいいのか迷うことのないテロップを心がけています。
— ハイトーンボイス清少納言こと有隣堂のアルバイトスタッフ・折橋慧さん(※現在は退職)が、J-POPの楽曲を古文に訳して歌う人気企画「古文訳J-POPの世界」のフォント使いも面白いです。折橋さんが歌っている動画のテロップでは、古文訳された歌詞は「筑紫Bヴィンテージ明朝」で、本来の歌詞には「筑紫明朝」と、それぞれ使い分けていますね。
ハヤシ:はい。mojimo-liveの中でぴったりのものが見つかったので使っています。
— 筑紫Bヴィンテージ明朝、クラシックな優雅さが出る書体です。こんなジャストな場面で使っていただけることがあろうとは……収録されていてよかったです! ここでも解説の文字はくろかねですね。
ハヤシ:くろかねは本当に優秀ですね。エッジや影をつけたりしても面白いフォントです。
サムネイルにはインパクトのあるフォント選びを
— サムネイルには個性的なデザイン書体もうまく使ってくださっています。どんなことを意識して作られているのでしょうか?
ハヤシ:サムネイルは有隣堂の馬淵さんが制作していて、もちろん僕もチェックしていますが、最近は具体的な指示などはあまり出さずにお任せしています。
有隣堂 馬淵基季さん(以下、馬淵):定番で使っているくろかねを基準に、動画素材の雰囲気に合ったフォントをチョイスするようにしています。粗編集が上がってきたタイミングで動画を拝見して、イメージを膨らませながら制作しています。
— ハヤシさんから「こんなサムネイルにして」など指摘されることも?
馬淵:ハヤシさんの中でのイメージがあるので、そこから離れてしまう場合にはご指摘いただきますね。
ハヤシ:プロデューサーとして僕が意識しているのは、ブッコローと有隣堂スタッフのおしゃべりがメインのチャンネルなので、他のYouTubeチャンネルのような派手さがないんですね。なので、文字の力でインパクトを与えるものを選んでもらうようにしています。
— 最後に、今はOSに標準インストールされている日本語フォントも増えてきていますし、「フォントを有料で使う」という感覚を誰もが持っているわけではないと思います。動画制作でmojimo-liveのようなサービスを導入する意義についてはどのように考えておられましたか?
ハヤシ:チャンネルを立ち上げるにあたって有隣堂のみなさんに伝えたのは、ちゃんとしたものを使うためにお金はかけた方がいいということ。YouTubeは群雄割拠の時代で、ありとあらゆるジャンルの人たちが参入してきているので、画面にもっとも登場するフォントに妥協しちゃだめだと。無料のフォントでも探せばいいものもあるかもしれないですが、メーカーが有料で提供しているサービスなら品質の揃ったフォントを使うことができます。
それに、動画の再生数にもそういったところが反映されていると思っています。「有隣堂しか知らない世界」には8分間のうち7分59秒ぐらいはテロップが出ているので、その文字が変な形だと、無意識に違和感が生まれてしまうので。
— 快適に動画を見てもらうために、フォントが役立っているのならとてもありがたいです。編集のテンポが良くて、どんどん次の動画を再生してしまうんですよね。
ハヤシ:編集もすごく考えていますよ。特に意識しているのは、見終わった後に余韻は残さず、1カットごとに“ものたりなさ”を残すこと。チャンネルが限られているテレビとは違って、動画は視聴者の選択肢が無限にあります。飽きずに見てもらうための工夫を散りばめることで、最後まで楽しんでもらえる動画になっているのかなと思います。
— これからは制作されているみなさんの工夫にも思いを馳せながら、チャンネルを楽しみたいと思います。今日はテロップでのフォント選びや動画編集のポイントまで、いろいろなお話を聞かせていただき、ありがとうございました!
(構成:フォントワークスnote編集部/文:堀合俊博)