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英語表記に気をつけよう[2]:ハイフンとスペース、ダッシュの使い分け

欧文書体の書体ディレクター、ヨアヒムさん協力のもと「英語表記でありがちな間違い」とその解決法をご紹介していくこのシリーズ。

第1回は日本語と外国語で併記する場合の“心得”とも言えるトピックでしたが、第2回となる今回は少し実践的に。英語を扱うときに迷いやすい「複合語でのハイフンやスペースの使い方」と、「ハイフンとダッシュ、似た記号の使い分け」について紹介します。

〈書体ディレクター プロフィール〉
Joachim Müller-Lancé(ヨアヒム・ミュラー゠ランセイ)
1961年ドイツ出身。スイスのバーゼル・スクール・オブ・デザインでグラフィックデザインを学び、日本を含める各国のタイポグラフィコンペティションで優勝するなど高い評価を受ける。
2018年にはソウルのフォントメーカーYOON Designの欧文のデザインディレクターとして活躍。2020年から、フォントワークス社に加わり、現職の欧文書体の書体ディレクターに就任。

第2回:ハイフンとスペース、ダッシュを適切に使い分けよう!

いろいろなパターンがある複合語

ハイフンやスペースの使い方で迷いやすいのが「複合語」です。

複合語とは、もともとは独立していた単語が2つ以上結びついて1つの単語になったもの。日本語だと「待ち時間」「ビデオカメラ」といった言葉ですね。英語の複合語も成り立ちは同じなのですが、ハイフンでつなぐかスペースを入れるか・入れないかなど、表記のしかたが単語によって異なります。以下に複合語の例をいくつか挙げてみます。

teleconference(tele-conference、tele conferenceは誤り)
mixed-use(mixeduse、mixed useは誤り)
home office(homeoffice、home-officeは誤り)

また、ハイフンの有無、スペースの有無が前後の単語の存在によって変わる場合もあります。

northwest(北東)
southwest(南西)
east-northwest(東北東)

two-thirds(3分の2)

a half hour(30分)
a half-hour lecture(30分のレクチャー)
at six thirty(6時30分に)

さらに、ハイフンの有無、スペースの有無が文法上のルールによって変わる場合もあります。

eleven(11)
twenty-eight(28)
two hundred thirty-two(232)

I am a fifty-nine-year-old.(私は59歳です)
He is five years old.(彼は5歳です)

in the twentieth century(20世紀に)
twentieth-century art(20世紀の美術)

このように、ハイフン/スペースの有無についてはちょっとややこしいので、必ず辞書や実際の用例をチェックして記載するようにしましょう。


英語のダッシュと日本語の全角ダッシュは別のもの

英文におけるダッシュとハイフンの違いは何でしょうか? 人によって使い方が異なる場合がありますが、以下に一例を挙げます。

ハイフン(-):語の連結。
 例:north-northwest

短いenダッシュ(–):範囲。
 例:an east–west avenue

emダッシュ(—):文章の中断。
 例:My power? Alas, I doubt—

2-emダッシュ(——):文章の中断。
 例:How lush——glass looks!

3-emダッシュ(———):参考文献リストで同じ著者の文献が並ぶときの省略。
 例:Ruskin, John. Lectures on Art,. . .
   ———. Aratra Pentelici: Six. . .

また、和文の全角ダッシュや音引きを英文に使用してしまう場合がありますが、これも注意が必要です。英文とは縦の位置が高いですし、ハイフンに使うには長すぎるため、英語の文字とマッチしません。

上の画像は英語のハイフンにするところに日本語のダッシュ(―)を入れている例です。千の太さや幅の長さが合っていませんし、高さが小文字の位置と合っておらず、ちぐはぐな印象を受けてしまいます。

正しい例

今回は英文におけるハイフンとスペースの用法の違いについて、そしてハイフンとダッシュの使い分けについてお話しました。見た目が近いものなので、つい意識せず間違った使い方をしてしまいがちです。実際の英文などをリファレンスにして確認できるようにしましょう。

※ここでご紹介している画像は例を分かりやすくお伝えするためにご用意した、架空の事例です。

※本記事は2020年、Fontworks「もじがたり」に掲載された「英語タイポグラフィ講座 初級編」を再編集してお届けしています。(構成:フォントワークスnote編集部/協力:アドビ社)


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