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シンプルで読みやすく、あらゆるシーンで選べる欧文書体「Yo One」誕生

2023年9月、フォントワークス LETSでご利用いただける新書体「フォントワークス Yo One」がリリースされました。Yo Oneはフォントワークス書体デザインディレクター、ヨアヒム・ミュラー・ランセイが手がけたオリジナル欧文書体。多様な用途に柔軟に対応します。

今回のnoteでは、このYo Oneについて詳しくご紹介します。

ヨアヒム・ミュラー・ランセイ

〈書体デザイナー プロフィール〉
ヨアヒム・ミュラー・ランセイ
1961年にドイツに生まれる。スイスのバーゼル・スクール・オブ・デザインでグラフィックデザインを学び、日本を含む各国のタイポグラフィコンペティションで優勝するなど高い評価を受ける。世界数ヶ国の学校で教鞭をとり、グラフィックデザインやタイポグラフィに関する記事や作品を出版物に掲載。
そのほかに、海外複数社の情報デザインとVI(ヴィジュアル・アイデン
ティティ)を担当。2018年にはソウルのフォントメーカーYOON Design社の欧文のデザインディレクターとして活躍。2020年から、フォントワークス社に加わり、現職の欧文書体の書体ディレクターに就任。
プロフィール詳細(フォントワークス コーポレートサイト)

フォントワークスデザイナーが手掛けた、初のオリジナル欧文ファミリー Yo One

まずは導入として、デザインされたヨアヒムさんご自身に、Yo Oneが生まれた背景について、いくつか基本的な質問をしてみました。

— Yo Oneを作ろうと思ったきっかけを教えてください。

ヨアヒム フォントワークスのメンバーに加わったばかりの頃、汎用的で使いやすく、幅広いデザインに使用できる、一連の欧文書体を開発してほしいと言われました。私は大量にスケッチをして、さまざまな書体のアイデアを基本的なアルファベットに拡張しました。
 それらを日本のグラフィックデザイナーの皆さんへ見せてヒアリングをしたところ、汎用性鮮明さ読みやすさという点で抜きん出た評価を得られた書体がYo Oneです。欧文書体の歴史に関するセミナーやサンプルのデザインなど、他の活動にも取り組みながら3年の時間を費やして完成させました。

— Yo Oneとはどのような書体でしょうか?

ヨアヒム Yo Oneは欧文書体が持つさまざまなバリエーションを複数の軸で体系化したフォントシステムであり、156フォントを有するスーパーファミリーです。

 Yo Oneスーパーファミリーは、一つの字形から出発し、セリフの有無、コントランスの強弱など異なる特徴をもつ書体へ展開されていきます。統一されたルールで設計されたスーパーファミリーなので、セリフとサンセリフなど異なる特徴を持つフォントを組み合わせて使用しても調和を保つことができます。ブランディングなどで視覚的な統一性が必要なシーンにもおすすめの書体です。

Yo Oneを使用したデザインアイディア

— Yo Oneという書体名の由来は?

ヨアヒム 書体名の「Yo」は、カリフォルニアで暮らしていたときの私のニックネームです。「ヨアヒム」を皆が発音できなかったので、呼びやすいように「hey!」と同じくカジュアルな挨拶の意味がある「Yo」を使っていました。日本語でも「世」「洋」「~よ!」などの意味合いがありますよね。
 「One」はフォントワークスデザイナーが手掛ける初の欧文書体であり、「Yo」シリーズの最初という意味です。また、1つのフォントシステムの中に、欧文タイポグラフィを構成する基本的な文字がすべて含まれていることも意味しています。


Yo Oneのコンセプト、Yo Oneの新しさ

続けて、Yo Oneの主な特徴を紹介していきます。

156フォントで構成されるスーパーファミリー

ヨアヒムさんの話にもあった通り、Yo Oneは複数の軸で体系化したフォントシステムで、156フォントを有する「スーパーファミリー」です。
大きく分けると6つのファミリーで構成されています。まず「セリフ・サンセリフ」の2スタイルに分かれ、それぞれに書体の特徴を表す「リニア・セミ・コントラスト」の3フレーバーがあります。
各ファミリーが13ウエイトで展開され、それぞれにローマン体とイタリック体の2アングルを用意しています。

6ファミリー(2スタイル × 3フレーバー)
× 26サブファミリー(13ウエイト × 2アングル)
156フォント

これらのバリエーションの中から、フレキシブルにフォントをご選択いただけます。


セリフとサンセリフ、リニアとコントラストの組み合わせ

Yo Oneは、「シンプルで読みやすいデザイン」を目指しており、グラフィックや看板などの見出し用途から、エディトリアルデザインなど本格的な本文組版まで、豊富なスタイルとウエイトで対応できます。

6つのファミリーは、セリフとサンセリフ、リニアとコントラストの組み合わせで構成されています。「リニア」は抑揚が少なく頑丈な印象を与えるスタイル。線幅に強弱がある「コントラスト」は華やかさやエレガントさを表現できます。

さらに、リニアとコントラストの中間に「セミ(=ハーフ)」が加わります。適度な抑揚があるセミは、ベネチアンやトランジショナルの書体に近く、可読性が高いスタイルです。

これらの組み合わせにより、Yo Oneは
セリフ リニア」「セリフ セミ」「セリフ コントラスト
サンセリフ リニア」「サンセリフ セミ」「サンセリフ コントラスト
の、6つのファミリーに分けられます。


美しさと実用性を高めた、ネオヒューマニスト書体

Yo Oneは、温もりを感じる親しみやすさと、信頼性と実用性を兼ね備えた汎用性の高い書体です。現代的でクリーンかつ鮮明、あらゆるニーズに対応する書体としてデザインされました。

全てのスタイルの基礎となっている骨格は「ネオヒューマニスト」です。

欧文書体の歴史の中で、1950年台に急増したネオグロテスク・サンセリフに対して、より読みやすさを向上させたヒューマニスト・サンセリフが台頭してきました。ヒューマニスト書体は、カリグラフィの運筆を取り入れ、自然に書かれたようなストロークを再現しています。
ネオヒューマニスト書体は、それがさらに発展したものです。文字ごとの形状の違いが大きく、識別しやすくなっています。特徴的なのは C e 3 などに見られるオープンカウンター形状で、開口部を広く取ることにより、判別性や視認性が向上しています。

6つのファミリーそれぞれのスタイルを紹介

たくさんのフォントが選べるYo One。柔軟性が高いぶん、どのように選べばいいか迷ってしまうかもしれません。
そこでヨアヒムさんが考える、6つのサブファミリーそれぞれの「スタイル」の特徴をまとめてもらいました。最後にそのテキストをご紹介したいと思います。

セリフ リニア — Coarse(硬質)
頑丈で構造的なこのファミリーは、実用的でありながら温かみもあり、親しみやすい印象を与えます。がっちりしていて、安定感のある書体です。
誠実で頼もしく、そしてどこか懐かしい佇まい。工業分野だけではなく、意外に自然分野なテーマにも適しています。園芸用品、オーガニック食品、ビールなどと様々なジャンルに使用できます。

セリフ セミ — emotional(感情)
リニアよりも上品でエレガント、コントラストよりも温かみを感じさせるこのファミリーは、長文での使用に適しています。例えば法務、行政などの公文書に使用すると、品位と信頼感、目的と厳格さが伝わります。オーダーメイドの衣服や製造業、歴史的観光地や、高級酒、伝統食品にも適しています。

セリフ コントラスト — complex(複雑)
このファミリーは一番華やかです。朗々と響くガラスの結晶のように、高級感を伝えます。メタリック感のある繊細さは、新聞、医療、金融サービスに適しています。クリアで明瞭な見た目は、高級時計やアクセサリー、ガラス製品や金属製品、テクノロジーや科学といった分野で使いやすいです。

サンセリフ リニア — modest(素直)
このファミリーは、最も機能的かつ実用的で、率直な印象を与えます。小さなサイズや低解像度の画面でも機能し、要素の多い背景の中でも目立ちます。注意書きなどの使用にも効果があるでしょう。ビジュアル的には、実用性、頑丈さ、信頼性、誠実さが伝わります。案内表示やサイネージ、ユーザー・インターフェース、テクノロジー、スポーツなどにご利用ください。

サンセリフ セミ — rational(理性)
親しみやすく優しい雰囲気のこのファミリーは、長文に適しています。見やすく、控えめで、落ち着きがあり、少しクラシカルな雰囲気も持ちます。主張が強すぎず、雑誌や書籍のデザインに理想的です。見た目はリニアほど機械的でなく、コントラストよりも温かみがあります。文化、教育、クラシック音楽から銀行取引まで、また、ワインにも合いそうです。

サンセリフ コントラスト — sensible(聡明)
このファミリーは非常にクリーンでクールかつシャープに見えます。メリハリのあるデザインは文章にするとよりいきいきするため、見出し用の大きなサイズで使用すればエレガントな曲線が際立ちます。パッケージや広告、雑誌やポスターなどスタイリッシュさや華やかさを出したいときに適しています。

Yo One 書体見本帖 発売

ご覧いただいた通り、欧文書体 Yo Oneはここでは語り尽くせない魅力とボリュームを持つ書体です。そんな魅力を存分にお伝えできる欧文書体見本帳が完成しました。

Yo One 書体見本帖

ページ冒頭にはリソグラフ印刷のビジュアルページを収録。
また書体見本だけにとどまらず、Yo One の概要やそれぞれの書体の特徴について、約40ページにわたって細かく説明しております。本文はヨアヒムさん執筆の英文と日本語訳文の2パターンを掲載。
フォント好きの方はもちろん、欧文フォントをこれから扱ってみたい方にも是非読んでみて頂きたい一冊となっております。

【商品詳細商品内容】
Yo One 書体見本帖
B5/本文 42P+ビジュアルページ(リソグラフ印刷) 8P
価格 2,500円(税込) ※送料込み

販売:フォントワークスBASE


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